カーボン・オフセット(J-VER)制度の疑問点

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五月を通り越し、夏が到来したかと思わせる気象状況が続いている。以下の「 」の部分は、Enviro-News from Junko Edahiro No. 2325 (2014.05.13) からの一部抜粋と、その次は、私の地球温暖化に関する一つの見方を綴ったものである。

「2013年はエルニーニョ現象(地球の気温を押し上げやすい海洋・大気循環パターン)が発生しなかったにもかかわらず、1880年の観測開始以来最も気温の高い年の上位10年に入った。この上位10年は、1998年(強いエルニーニョ現象が起きた年)を除けば、すべて2000年以降で占められている。しかし、重要なのは年単位の記録よりも長期的な傾向である。地球の気温の場合、明らかに上昇の一途をたどっている。」

以上の通り、もう「地球温暖化」は周知の事実として温室効果ガス(GHG)の削減はもとより、すでに異常気象に備えた取り組み、竜巻や豪雨、巨大台風、そして猛暑などについては、今後その頻度が高くなることは間違いないとして、私たちはその対策を急ぐ必要がある。例えば、竜巻に遭遇しやすい地域の住宅は、竜巻の被害から逃れるために地下室にシェルターを設けるとか。また、野菜や果物の栽培は、ハウスでも簡易なビニールパイプとビニールシートで作られたものではなく、浸水や風、豪雪などに耐えうる堅牢な植物工場と言えるものが造られる必要があると考えている。植物工場は、かなりのスピードでその広がりを見せているようだ。コストアップにつながることは避けられないであろうが、付加価値の高い作物ならばリスクヘッジの視点から、また、植物工場における栽培面での国際競争力を持つ農業の在り方を変えるチャンスでもあると考える。要するに、異常気象の頻発によるダメージを最小にすると同時に、国際競争力のある栽培技術の確立が急がれる。

また私は、植物工場の建設部材に日本の木を多用することを推奨し、期待している。その背景には、2008〜2012年の京都議定書における温室効果ガス(GHG)の削減目標における森林吸収の取り扱いに、ある種、違和感を覚えたからである。ご承知の通り、京都議定書における削減目標値は1990年比マイナス6%であった。この目標は、京メカクレジット(CER)と炭酸ガスの森林吸収分を組み入れることで、かろうじて目標を達成したと報告されている。そもそもこの5年間のGHG削減目標は、批准国すべての排出量を加算しても20数%にしかならず、日本の産業界は、日本のみが経済競争力的に大きなハンディーを背負ったゲームで、大量排出国である中国と米国の参加がなければ効果的でなかったと、その問題点を指摘している。言い分はその通りであろうが、この2か国を同じテーブルに載せる意味でも、この第一約束期間の努力は無駄でなかったとの強い政府メッセージが必要のように思った。世界における経済競争の上で、自国が大きなハンディーを背負いたくないとする考えは分かるが、その努力をしたが故に、GHG排出削減の新しいハードルを逆に世界に提示し、新規のビジネスルールを逆提案し、国際競争ゲームを有利に仕掛けていくというアプローチがあっても良いと考える。

昨年5月のマウナロア観測所で観測された炭酸ガス濃度は400ppm、2014年の今は430ppmである。前述のEnviro-Newsのとおり気温の上昇は明らかであり、その対応策は待ったなしである。

遠回しになったが、京都議定書の森林吸収の議論は、これが決まるまでには賛否両論があり、かなり懐疑的な意見を持つ国が多かったとする記述が残っている。議論のポイントは、どれだけの国で、自国の森林経営をしっかりできているのか、それを検証する手立てがないという点にあったようだ。遡上に挙げられた森林吸収は、あくまでも適切な森林経営管理がされた上での考え方であり、殆どの国ではこの森林経営管理がなされていないというものであった。ならば、この吸収分については、京都議定書の要件から外そうとの意見が展開されたとする記述も残っている。日本は、COP3の開催国として、最終的に森林吸収分を削減目標値として組み入れることを押し切り、結果的に助けられた形となった。次回は、日本は森林経営をどの国よりもしっかり進めることで、森林経営管理の必要性ならびに優位性を国民全体で知る機会を作るとどうなるか、世界に先駆けて森林経営の理想形を作ろうではないかとする国家目標が多くの国民の間で合意され、この活動に火が付く。その一事例が、今ベストセラーになっている「里山資本主義」の考え方である。岡山県真庭市から始まって、オーストリアの森林経営の実態に学び、そして、高知県が真庭市の手法を採用したいと、県知事が真庭市に日参した話。この動きを日本全体の森林において実現させる。2020年までに国内材利用率を50%にする林野庁の目標も、これらの動きがあれば現実のものとなることが考えられる。この活動を全国で進めることを期待したい。国有林、県有林、市有林、村有林そして民有林、その管理実態には大きな違いがありすぎる。

京都議定書の約束年の期間中に、県が森林経営管理をした結果、管理目標よりも多く吸収された炭酸ガス分をJ-VERクレジットとして売り出した。この動きは比較的多くの地方自治体で進められた。しかし、ここで疑問に思う点がある。日本は2008〜2012までの5年間、日本全体の森林吸収分として1,300万t-C(炭酸ガス換算4,760万t-CO2)を目標値に組み込むことが許された。しかし、その森林の一部を経営管理し、吸収した炭酸ガス量をクレジットとして発行したということは、国連の気候変動枠組締約国会議(IPCC)が日本に許可した森林吸収分の二重使用に当たらないかということである。つまり4,760万t-CO2の一部がクレジット化されたことになる。このクレジットでカーボン・オフセットする行為は、森林吸収分の二重使用にならないかということである。私は、最近になってこの事の疑問を持つようになってきた。

それはそれとして、第一約束期間は過ぎたのだから、現在は森林経営することで生み出されるクレジットを、日本国内で使用することができるとする考え、これも無理があると考える。2013年11月、ワルシャワで開催されたCOP13で、日本は拘束力のない2020年までのGHG削減目標値として、2005年度排出実績のマイナス3.8%を約束とした。この3.8%の内訳は森林吸収分が2.8%で、実質の削減努力は1%と説明されている。このように、拘束力はないものの、日本の炭酸ガス削減量に森林吸収分を織り込んだならば、再び県単位の森林経営によって作り出されるクレジットは、二重使用になってしまわないか。

こんな疑わしいやり方を取るなら、いっそのこと日本の森林の炭酸ガス吸収量4,760万t-COを、そっくりそのままクレジット化し、森林によって恩恵を受けている価値として、国民にクレジットを買ってもらい、この資金で運用評価機関(仮に日本森林財団)を設立することを勧めたい。

日本の森林は、毎年8,000万m3作り出されるという。これは日本が1年間に、実際に使っている木材量に匹敵する。このうち国内材の利用率は27%に相当。これを林野庁は、前述したとおり2020年度までに50%以上にしたいとする目標を掲げている。安価な外材を差し置いてこの目標を実現することは極めて困難が伴う。そこで、私は植物工場を木造で建設することを提案したい。特に閉鎖型の完全制御型の工場は、エネルギー多消費施設と言えるもので、温暖化リスクを回避する堅牢な植物工場を木造で建設する行為は、日本の森林経営を盛んにすることと、植物工場が持つ温暖化の加速要因を相殺する上からも辻褄のある手法になりうると考える。まして、この植物工場が世界で競争力を持つ施設だとなれば、日本の森林育成(経営管理)、炭酸ガス吸収の明らかな加速、植物工場への木材使用が工場でのエネルギー使用との相殺に、そして他国より優れた植物工場ノウハウを持つことになるとするならば、石田梅岩の「三方よし」を上回るメリットを引き出す可能性を有することになる。

都道府県の森林経営を、(仮称)日本森林財団の資金で後押しする。ただし、適切な森林経営と森林資源の効果的活用が支援の前提となることは言うまでもない。

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