「シェールガス革命」と地球の4つの課題について

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地下約4,000mの深層部ある頁岩(シェール)層に含まれる天然ガスならびにオイルをシェールガス・オイルと呼び、次代を担う新たなエネルギー資源として注目され始めたのが1990年代です。それから約20年が経った今日、米国はこれらを掘削する技術(水圧破砕法=フラッキング:High-Volume Hydro-Fracturing)[1]を確立し、すでに商業生産に入っています。シェール層は地球上に広く分布しており、注目すべき地域として南北アメリカ、オーストラリア、中国、インドネシア、アフリカ、ヨーロッパ等が挙げられており、その総量は206.6TCF(兆立方フィート)と見積もられています[2]。皮肉にも日本には有望なシェール層がなく、新しいエネルギーの恩恵にあずかれなというのが実情のようです。

現在、シールガス・オイル(以下、シェールガスという)の生産は、米国が断然群を抜いています。その理由には、次のような背景があります。まず、米国は過去1850年半ばに石油を発見して以来、1970年代までの1世紀以上に亘って石油大国としての実績を抱えていました。したがって、米国には精緻な地質情報データベースが揃っており、しかも、一個人の土地所有者が多く、掘削会社との契約取引が極めてスムーズに行えることや、さらに、地下の深層部にあるシェール層からシェールガスを汲み上げる掘削技術(フラッキング)の開発に成功しています。そして、過去に敷設された石油・ガスのパイブライン等インフラ設備も整っていることに加え、米国国内にシェール層が広く分布していることも大きな強みとなっていることが挙げられます。現在、米国の中でも突出した生産量を誇っている地域がテキサス州で、リグ(掘削装置)の数だけでも911基に及んでいます。ちなみに2番目はオクラホマ州の190基で、全米では1,900基のリグが稼働していると紹介されています。この規模が如何に巨大であるか、2位カナダのリグが180基(1/10)程度であることからも見ても、米国が群を抜いていることが理解できます[3]

現在、米国は、シェールガスにおいては一人勝ちの状況にあります。そして、米国はこのシェールガスによりエネルギー自給を達成することのみならず、輸出国になろうとしています。日本の安部晋三首相が2013年2月に訪米した際、シェールガスの買い入れを申し入れたことは、記憶に新しいところです。

「シェールガス革命」といわれる背景には、まず世界のエネルギー資源をめぐる勢力分布が大きく塗り替えられることにあります。前述した通り、シェール層は地球全域にわたって分布しており、その量は今後100年あるいは150年分のエネルギー量を賄えると見積もられています。これまで、日本を含むエネルギー輸入国の多くは、主に中東あるいはロシア等の石油や天然ガスに依存していましたが、この「シェールガス革命」により、状況が一変することになります。

地球が抱える一番の課題は「エネルギー問題」でしたが、「シェールガス革命」により、向う一世紀以上のエネルギーは担保されると見られています。1972年のローマクラブが発表した「成長の限界」[4]から今日まで、人類の経済活動規模は年を追うごとに大きくなり、特に、1990年代中庸からBRICSの台頭により、エネルギー利用は加速度を上げ一方です。その結果、エネルギーの枯渇問題が常に叫ばれていました。こうした背景の下、一時は、原子力エネルギーの利用が高まる気配でしたが、いわゆる日本の3.11以降、原子力は人類がまだ上手にハンドリングできるエネルギーでないことが露見してしまった結果、その依存度を下げざるを得ない状況にあります。

ところで、地球が抱える二番目の大きな課題は、「気候変動」(地球温暖化問題)ですが、「シェールガス革命」によってこの問題がクリアにされるどころか、化石燃料であるシェールガスの利用により、地球上の温室効果ガスの増加は避けられない恐れがあります。なお、重油や石炭に比べれば、シェールガス(天然ガス)の炭素含有量は少ないことから、単位当たりの二酸化炭素(CO2)の排出量は減少します。しかし、どうでしょうか、使えるエネルギー量に不安のあった状況が、「シェールガス革命」によって解消されることから、経済新興国予備軍である発展途上国は、経済発展の要件であるエネルギーの課題が取り払わることになります。したがって、単位当たりのCO2の排出量は少なくても、利用されるエネルギーの絶対量は大幅に増えることが想像されます。「シェール革命」がもたらす恩恵は、世界が必要としているエネルギーについて、1世紀以上分も担保してくれることになります。このことは、明らかに地球温暖化を加速することになり、その結果、第三番目、第四番目の課題である「食糧問題」、「水問題」がより深刻になってくることです。

[1]  http://water.epa.gov/

[2]  日経、2013年6月12日号参照

[3] http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4572/201201_039a.pdf

[4]  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%90%E9%95%B7%E3%81%AE%E9%99%90%E7%95%8C

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