日本の期待を裏切った中国の環境保全の取組み(「癌村」の登場)

1972(昭和47)年の日中国交正常化後、1988(昭和63)年の日中友好環境保全センターの無償供与プロジェクト、そして施設が完成したのちは、中国の環境専門家に対するキャパシティービルディングやより高度な機材協力等、日本は真剣に中国に対して日本の過去の二の舞を踏んでいただきたくない。その思いで、日本の国民の浄財がODAとして、中国に注がれました。こうした日本政府の中国支援活動に加え、私的においてもNGO組織「中国の環境保全支援委員会」を立上、環境支援協力を進めてきた実績を抱えていますが、今の中国中央政府のリーダーは、そうした支援実績を無視した態度を取っています。今、この時代に過去の戦争歴史を持ち出し、どうしようというのでしょう。自国民が環境問題で苦しんでいる現状。こうした状況下では過去の歴史問題を蒸し返すより、現実の水問題や大気汚染問題の解決を急ぐ必要があります。現実は大気汚染、水汚染、土壌汚染、悪臭、騒音、振動、地盤沈下等、日本が過去に経験した忌まわしき典型7公害すべてを顕在化させているのが、今の中国です。「癌村[1]」の話は、世界の多くの人びとが知るところとなりました。こうした癌村の発生する地域は、特に水質汚染がひどい地域に集中しています。農業における過剰な化学肥料や農薬の投入地域、加えて、家畜排せつ物の処理が適切でなく、大量に河川や湖沼に汚染物質が流れ込んでいる地域が問題となっています。癌の発症の要因は、汚染水や汚染作物(食品)等にあることは明確です。「食道がん」や「胃がん」で命を落す人が圧倒的に多いということは、これを証明しています。以上、中国が抱える環境汚染の深刻度について、理解いただけたと思います。

水、大気汚染等の汚染源は国や省が管理責任を持つ企業によってもたらされている

中国は、国家政策上、内陸部に重化学工業を施設しています。これら工場はいずれも水を多用します。また、これに加え鉱山開発も進められており、これらも水を多用します。これら施設は、国有あるいは省政府の監督責任の下で運用されています。いうなれば国や省政府が環境汚染源を抱えている。工場生産や鉱山開発で使用した水処理にお金が掛かるとして、無処理で河川に放流している。汚染は地下水にも及んでいます。日本の鉱毒事件では、群馬と栃木県をまたがる足尾銅山(明治から昭和にかけて:1887~1907年)[2]、愛知県の別子銅山(1891~)[3]、岐阜県の神岡鉱山(イタイイタイ病:1915~1990年)[4]が有名ですが、いずれも19世紀末から20世紀初頭にかけて起こった鉱毒事件です。日本では、鉱毒被害をなくすべく篤志家による反対運動が活発に行われてきた背景があります。これら鉱毒事件の中でイタイイタイ病[5]は、比較的最近の事件(1910〜70年)で、1968(昭和38)年に日本政府が認めた公害病の第1号になりました。ここに中国政府と日本政府の環境問題の取組みに対して、大きな違いが出ています。

中国における飼養豚、飼養牛の特殊事例

最後に、中国の恥部について触れ、私の中国に対する環境観についてひとまず閉じたいと思います。中国のCNNと言ってよいでしょうか、「新唐人TV」はYouTubeで中国の様々な矛盾を突いた動画を配信しています。その中で比較的最近放映された番組の一つに、「ゴミ処分場(江蘇省南京市のごみ処分場)[6]に豚数千頭を放ち飼育」している場面がありました。この「ごみ処分場」に豚を放つやり方は常習的に行われていると、番組では紹介されていました。ところが、なんと豚のみならず牛もゴミ処分場(湖南省長沙市のごみ処理場、長沙市は比較的武漢に近い都市)に放たれて飼われている様子が映し出されていました。中国の家畜飼養がすべてこうした状況にあるわけではありませんが、現在の中国社会の拝金主義的な一側面が窺える証左だと私は感じました。

[1] http://matome.naver.jp/odai/2136175418093346201

[2] http://kotobank.jp/word/%E8%B6%B3%E5%B0%BE%E9%89%B1%E6%AF%92%E4%BA%8B%E4%BB%B6

[3] http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000102162

[4] http://kanazawa-sakurada.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/136.html

[5] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%82%A4%E7%97%85

[6] https://www.youtube.com/watch?v=Vp9DUmsRUqU

.com/watch?v=Vp9DUmsRUqU

中国は水を大切に使わない国民性か?

このように中国は水不足の状況にありながら、水を大切に使おうとする考えに著しく欠けています。つまり、環境資源を大切に使う意識が全国民において不足しています。その背景は何かと言えば、多くの人々が拝金主義に陥っていることです。手っ取り早くお金持ちになろうとする意識が強すぎる。これは1978年の鄧小平の「南巡講和」における社会主義と資本主義とに違いがないと説明されたことに端を発していると、私は考えています。「資本主義は誰が見ても自然収奪の上に成り立つ経済システム」です。社会主義下で不自由に感じていた人々が“金も儲けが自由である”と解き放たれた。加えて1985年の「先富論」(可能な者から先に裕福になれ。「そして落伍した者を助けよ。」…これは国民の中に意識として芽生えていない)は、これを加速する形で解釈されてしまった。うがった見方かも知れないが、私にはそう思えてならない。中国はGDPでは世界第2位の大国になったが、環境問題への取組み姿勢は劣等国だと私は見ています。

経済格差が進行している中国と拝金主義の弊害について

中国は、明らかに経済的に豊かになったことは事実ですが、持てる者と持てない者との格差が拡大しています。その指標として使われる“ジニ係数”(0.4以上になると警戒状態、0.5以上は社会が不安定化する[1])がありますが、中国のジニ係数は限りなく0.5に近づいています。ちなみに、私が初めて中国北京に訪問した1985(昭和60)年のジニ係数は0.331でしたが、2013年には0.473となっています。ここ最近で限りなく0.5に近づいた年は、北京オリンピックが開かれた2008年で、0.491でした。昨今の中国事情を考慮すると、表面的かも知れないが2008年から2014年の6年間で経済格差が縮小・改善されていると見えるでしょうか。都市部の人々の豊かさと農村部との格差は、ますます広がっているように思います。また、中国は都市部に住む人々の間でも、経済的格差が広がってきている。大学は出たけれども、職がない。「蟻族[2]」の存在はまさに格差を象徴する姿だと思います。

水は文明を支配する-中国国家の水汚染は、国家の存亡に通じる-

本題に戻りましょう。中国の水汚染は極めて深刻です。私の個人的見解ですが、文明の崩壊の大きな要因に水問題があります。黄河文明も、メソポタミア文明も、はたまたエジプト文明も、ローマ文明も、衰退の大きな原因の一つに水の枯渇が挙げられます。その原因は森林の消失により水の保水力をなくし、水を枯渇させてしまったことにより文明が滅びた。私は現在の中国の水事情を見て、もしかしたら中国は水で滅びる国家ではなかと危惧しています。中国の一人当たりの水資源量は世界平均の1/4、日本の2/3程度です。急激な成長により水需要は膨大に増えていますが、中国は需要を満だけの水が不足しています。主要河川、湖沼などの表流水はすでに汚染されており利用に当たっては、殆ど前処理(浄化)を必要としています。汲み上げが比較的容易な地下水の80%が汚染されているといいます。長江以南は、表流水に依存していますが、大穀倉地帯を抱えるは黄河流域と東北部は、表流水が少ないために地下水に依存しています。

[1] http://synodos.jp/wp/wp-content/uploads/2014/02/graph12.pn

[2]http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9F%BB%E6%97%8F

GDP/Capitaが1万ドルを超えている地域の水汚染改善が進まない=「癌村」の存在

ところで、現在の中国の沿海都市部は、GDP/Capita(一人当たりの国内総生産額)では1万ドルに達していると見られます。しかし、どうでしょうか。環境問題は深刻の一途を辿っています。特に上海を中心とする長江デルタ地帯は、工業系、農業系等の排水、排せつ物により汚染が深刻です。工業系の汚染源は農業系と違って、汚染源を特定しやすい点汚染源で、監視も行き届きやすいのですが、法の網目を潜って汚水を垂れ流すという事件が頻発しています。特定汚染源にしてこうですから、特定しにくい農業系の非特定汚染源については、実態把握の難しさに加え、農民の意識を考えると汚染対策を促進させることは極めて難しいと考えます。長江デルタに隣接する中国第三の河川淮河[1](第一の河川は長江、第二の河川は黄河)も国家重点汚染対策水域ですが、極めて深刻な水汚染を抱えている河川の一つです。中国政府は、淮河に沿って林立していた水質汚染源である工場を強制的に排除した時期もあったが、現在の淮河の支川では深刻な汚染状況に見舞われているようです。特に最近話題となっている「癌村」については、長江デルタの周辺と、淮河周辺の村落に集中的にみられる現象で、多くの中国人はもとより、世界の人々が注目しています。

[1] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%A6%E5%B6%BA%E3%83%BB%E6%B7%AE%E6%B2%B3%E7%B7%9A

 

日本はニクソン大統領の脅しを受け、環境行政に力を入れ成果を上げた国

1978年の改革開放以来、中国は目覚ましい経済発展をしています。2009年にGDPで日本を追い抜き世界第2位の経済大国になりました。中国の経済発展は、果たして良かったのか悪かったのか、現時点では評価は難しいところですが、地球環境の持続性と言った点からは、大きな負荷要因を抱える国として、望ましい状況にはない。日本は、かつてニクソン大統領から「公害を垂れ流す国」と環境教書で脅かされ、慌てて公害国会を開催し、重要14法案を成立させ、1971(昭和46)年に環境庁を誕生させ環境行政をスタートした経緯があります。環境への取組みが主体的ではなかったとはいえ、日本は10年後には見事に公害を克服した国としてOECD(経済開発協力機構)に高く評価を受けました。動機はともあれ、日本人気質が公害撲滅に向かって一丸となって取組んだ結果は、環境改善という大きな成果を創り出すことに成功しました。

私の中国への思いは、経済発展の必要性は分かりますが、人命を犠牲にしてまでお金を追及するあり方は、おかしいと気づいていただきたい点です。国家のリーダーは往々にして経済発展が、リーダの仕事だと認識しているようです。豊かさが、国民が求めている姿だと思い込んでいる節があります。団塊の世代が後期高齢者に近づこうとしています。3人に1人の老人大国がすぐそこに迫っています。高齢者破綻、孤独死、過疎を通り越し限界集落化している地方の村、高度経済成長を続けてきた先の姿は、このような老人が不安の感じる、不都合な社会形成ではなかったはずです。

他国に脅かされても、動じない主体性を持った国家づくりを期待したい!

中国に対する戒めは、強く求めるにしても、自国日本のあり方について、もっと青春に汗し働いてきた老人に優しい、安寧に暮らせるシステム作りに、力を入れるべきです。日本が理想郷になる。言葉では簡単に言えますが、政治や経済の仕組みは、その方向を目指しているとは、多くの老人のみならず、若者も感じているのではないでしょうか。やはり、現在の資本主義では、格差を生む社会形成に合った仕組みのように思います。教育、人材育成のあり方を早急に改める必要を感じています。ICT(Information and Communication Technology )は、世代を超えて格差を生む形となっています。学校教育における浸透はもとより、社会人になった大人がこれを学ぶ機会(それを業としている人々は別です)を、またお年寄りに向けた学ぶ機会も密度高く行える仕組みをが必要だと考えます。好きや嫌いで受け止めるべきものではなく、これからの社会の恩恵を受けるには欠かせない基本的なスキルと認識していただく機会を設け、積極的な刷り込みのための取り組みが必要のように思っています。

過剰な窒素化合物は人体に有毒

また、窒素で汚染された水は、これも人体に悪影響をもたらします。水が汚染されているから加熱して水を利用しようとした場合、窒素化合物(硝酸塩類)はさらに濃縮されてしまいます。米国における事例ですが、窒素(硝酸塩)で汚染された水で粉ミルクを溶し赤ちゃんへ与えたところ、身体が青くなり酸素欠乏症(ブルーベビー症候群[1])で死に至ったケースがあるようです。これは窒素で汚染された野菜の取り過ぎにおいても起こると言われています。また大量のリンや窒素は、河川や湖沼あるいは沿岸海域の富栄養化をもたらし、アオコや赤潮の発生原因となります。その結果、水中の酸素不足により魚をはじめ水生生物を死に追いやります。この他、重金属による汚染も深刻な被害をもたらす恐れがあります。土壌や河川あるいは湖を汚染する豚の排せつ物を適切に処理しないと、私達の大切な水資源に大きなダメージを与えることになります。

[1]http://d.hatena.ne.jp/n-mochi/20110401/1301640728

日本における養豚排せつ物の処理の現状について

日本で「畜産公害」として表面化したのは、1985(昭和60)年頃です。それまではいわゆる産業公害問題が主流で、ちょうどOECD(経済開発協力機構)が日本に調査(1978年)に入って、日本が公害を克服した国として評価された7年後くらいに畜産公害が注目され始めました。日本の目覚ましい高度経済成長に伴い、都市化により住宅建設が郊外に拡大していったことから、それまでさほど問題として挙がっていなかった悪臭問題が表面化することになりました。家畜農家と都市住民との争い事が増えたことで、中でも養豚業者は廃業に追い込まれ、一部は場所を変え大規模化した養豚経営へと形を変えてきています。ちなみに、日本全国で飼養されている豚の頭数は約980万頭です。

日本の「家畜排せつ物処理法」は1999(平成11)年に施行

日本の家畜の排せつ物を適切に処理するための法律整備は、1999年に「家畜排せつ物の適正な処理に関する法律」(通称、排せつ物処理法)[1]が制定されたのが最初です。この時から家畜経営の実態を正確に調査するセンサスが実施されたと認識しています。その後2004年までには一通りの実態把握を終え、排せつ物を適正に処理できる養豚事業者には処理施設整備の助成金が付与されことが決まりました。本件を管轄する農林水産省は、家畜の排せつ物については、可能な限り農地還元を推奨しています。したがって糞の野積みや尿の素掘りの処理形態から、糞を堆肥化に、また尿は汚水処理施設で適正に処理し、液肥あるいは河川放流が可能なまでに処理(排水基準を満足)し放流することを望んでいます。

最初の法律からすでに15年が経過しています。日本における養豚経営は、環境対策面ではかなり進展はしておりますが、いまだ悪臭や水質汚濁問題が発生しています。産業公害を克服した国として高く評価されているものの、家畜の飼養による環境汚染問題は未だ発生しているのが現状で、この対策が急がれています。養豚場の排せつ物による代表的な汚染物質ですが、糞尿に含まれる窒素、リンならびに重金属(銅や亜鉛)が注目されています。窒素は葉物野菜などの育成のための肥料要素として欠かせませんが、過剰にあると人体に悪影響を及ぼします。

 

[1]http://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/t_mondai/03_about/

 

北海道で気象観測史上初の猛暑(36〜39℃)を記録した

世界の炭酸ガスの排出量グラフ140622

毎冬に訪れる富良野町でこの6月5日に気温36℃以上を記録たの報道があった。私は一昨年の大晦日から昨年13年の正月に、さらに昨年13年の大晦日から今年14年の正月と2年連続で年越しスキーを富良野で実施した。この両年は雪が豊富で、一部ふ吹雪いたものの快適なスキーができたことを思い出す。スキーの板をブーツから取り外し、抱えてロープウエイに乗るまでの大変さは、実は雪が多いと登る階段の段数が少なくなり楽になる。また、ロープウエイをおりてからもゲレンデまでは少し歩くが、その先ゲレンデに雪がなければスキー板を抱えながら階段を下りなければならない。しかし、雪が多いとそのままフラットにゲレンデに出ることができる。ここ2年の富良野はそのような状況であった。その、富良野が気象観測史上初の36℃を記録したと報じられ、驚くと同時にいよいよ温暖化が加速されつつあると思った。富良野の冬場の最低気温がマイナス20℃とすれば、夏と冬の温度差は56℃になる。私が住んでいる横浜の冬場の最低気温がマイナス5℃とすると、夏場の最高気温が36〜37度だから、その温度差は40℃前後である。北海道と横浜との気温の差があるというのは当然しても、夏と冬の温度差がこれほどもまでに異なれば、何か良からぬ自然現象が起こるかもしれない。

どうであろか、今年の北海道はこれまでに経験をしたことのない長雨に見舞われている。6月22日、JR北海道で、また脱線事故が起こった。これは推測だが、これまでにない長雨で線路の地盤が緩んでいた。何でもない線路で脱線事故を起こした。先のレールの幅の検査は、前回の事故で厳しく行ったとすれば、どうも北海道の地盤が長雨で水を大量に吸い込み、緩んでいた。こうしたことも考えられるかも知れない。夏、あまり雨が降らない地域で長雨、これまで雨量がなかった土地に水分を含む。受けから重い荷重が掛かる。水で緩んでいないのなら、荷重が掛かっても地面を耐える。しかし、含水率が高まった地盤の上の線路、荷重で地面が動いた。異常気象はこんなことも考慮すべきことを教えている。

折しも、2014年6月7日日経朝刊38面に、「温暖化対策を取らないと」今世紀末までに平均気温が4.4度上昇、真夏日が増え 年50日超の事態を招くという記事が掲載され、「雨の降らない日は増える一方、降雨の際は熱帯のような強い降り方になるではないか(環境省)」と書かれていた。2020〜30年ごろに温暖化ガス濃度がピークになるように対策を取り組めば。全国の平均気温の上昇は1.1度、真夏日の増加も12.3日に抑えられると紹介されていた。冒頭のpdfは、2008〜11年までの世界の二酸化炭素の排出量と2011年の国別排出量割合を示したもので、09年は前年度比で1.3%減であったのが、10年度は前年度比で4%増、11年度は前年度比で5%増加している。中でも中国の排出量割合は(26.8%)際立って高く、次いで米国(16.6%)、次いでインド、ロシア、日本、ドイツと続いている。ちなみに、この6か国で世界の60%の二酸化炭素を排出していることになる。誰が見ても課題は中国似あり、米国はシェールガスの利用で、従来より二酸化炭素の排出量を減らしている。

日本政府が中国への無償資金協力で建設した「日中友好環境保全センター」 と日本のプレゼンスについて

1972年、田中角栄首相と周恩来首相との間で日中国交正常化が図られたことは、多くの日本人が知るところです。この国交正常化交渉では、戦後賠償についても話し合われたようです。結論は、中国はその賠償を日本に求めない形で合意がなされています。暗黙の裡に、その後は日本から中国に向けた様々な有償、無償資金協力、すなわちODAプロジェクトが進められ、これが賠償に当たるものとして受け止められているようです。
こうした流れの中で、日中国交正常化10周年記念事業として、10周年の1982年に遅れること6年後の1988年に、日本の当時の竹下登総理大臣は、中国政府には、経済発展に伴い公害を発生させるという日本の二の舞を踏んでいただきたくないとの思いから、総額100億円の無償資金協力を行い、首都北京に「日中友好環境保全センター」の建設を進め、1996年に完成を見ています。

建設後は、中国の環境の専門家を育成するために、日本政府はフェーズⅠ〜Ⅲのプログラムを用意し、第一フェーズでは、技術系職員のキャパシティービルデング(能力開発)を、次いで第二フェーズでは、センター施設内の機材の充実に加え、さらに一段ステップアップした人材育成を、そして第三フェーズでは6.5億円を掛けて、同センターに基づき培われたキャパシティーをベースに、中国国家環境保護第十次五年計画(2001〜2005年)で掲げた三つの政策(1)「環境汚染の未然防止を中心とし、未然防止と汚染処理を両立させること」、(2)「汚染者が汚染を処理し、開発者が環境を保護し、利用者が環境汚染(破壊)を補償すること(PPPの原則)」、(3)「環境管理を強化すること」と、九つの環境管理制度{①環境影響評価制度、②「三同時」制度 (開発に当たって、法に基づき主体工事と同時に環境保護施設の「設計」「施工」「運転」の3つをいう)、③排汚費(汚染物質排出費)徴収制度、④環境保護目標責任制度、⑤都市環境総合整備に関する定量審査制度、⑥汚染物質集中処理制度、⑦汚染物質排出登記・許可証制度⑧期限付き汚染防除制度、⑨企業環境保護審査制度等} を実施に移すことであった。この時の国家環境保護局長は解振華氏で、中国の環境行政に大きな前進が見られるものと期待されていた。また当時の国家主席は江沢民氏から胡錦濤氏にバトンが渡された時期でもあった 。

日中国交正常化以来、中国に向けたODA(政府開発援助)は、金額にしてざっと3兆円を超えている。日本は中国に対する支援には、発電所や空港建設などインフラ整備にとどまらず、特に中国の経済発展に伴い危惧される、環境汚染対策に関する援助に力を入れてきたことは、前述「日中友好環境保全センター」のフェーズⅢを見ても明らかです。繰り返しになるが、日本が起こした激甚公害を中国にはくれぐれも起こしていただきたくない。そのためには日本政府は過去の経験を惜しまず中国に提供する用意があり、このことに鑑み「日中友好環境保全センター」が造られた。私はそう理解しています。当初は、環境保護の第十次五か年計画の内容にも見られるように、中国の環境保全・保護政策はうまく行くかに見えましたが、21世紀もすでに14年が経過した今日、中国に日本と同じ轍を踏んでいただきたくないと願いは、全く覆される形で深刻な激甚公害の抱えてしまったのが、現在の中国です。厄介なのは、中国は人口と言い、面積といいあまりにも巨大な国家であり、したがって大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、食品汚染、悪臭公害、自動車公害、騒音・振動、地盤沈下等、すべての環境問題に強力な赤信号が灯っていることです。
日本政府は、日本国民の税金である膨大な資金(技術供与や人材育成等の支援)を中国に向け使ってきたにもかかわらず、中国の環境の現状は日本が期待した真逆な状況に置かれています。一体全体日本政府は私たち国民の浄財を使って、中国に対して何をしてきたのでしょうか、結果がこれですかと問いたい。私は日本人として日本政府の中国に対する取り組みについて、強く憤りを感じています。

中国はGDPでは日本を抜き世界第2位の経済大国になっています。一人当たりのGDPも平均で5,000ドル超す状況にあります。日本政府は、中国政府に対して深刻な環境問題の解決に向け直ちに行動をお越し、その成果を作り出すべきであると、もの申すべきです。日本の10倍の人口を抱える中国が、こともあろうに日本の50〜60年前の激甚公害を再現させ、多くの中国国民を苦しめている。日本政府は、現在も中国に向けて環境保全分野は無償資金協力(ODA)を進めています。8年前の2006年に実行された中国全省に亘る黄沙モニタリング体制の整備事業では、数十億円もの設備機材と人材支援が行われましたが、日本政府はこれらモニタリングネットワークで採られている一切のデータを、知らされない状況です。何のための援助だったのでしょうか。

ここで改めて認識しておいていただきたいことは、日中国交正常化から1990年初頭までの援助資金の価値と、その後の支援資金の価値とは大きく異なることです。例えば、1988年当時の一人当たりのGDPの日中比較を行うと、中国を1とすると日本は100に相当していました。累積の援助総額が3兆円を超すといっても、発展途上の中国に向けて援助資金の価値と、経済力をつけてきた95年以降の援助資金の価値とは、およそ異なるということです。つまり、莫大な資金援助と人材をつぎ込んだ環境保全協力の結果が、今日の中国の姿か、となると多く日本国民は黙っていない。故に、中国が起こしている激甚公害に対して、早期に解決すべきことを日本政府は中国政府に強く迫ることは当然の行為であると考えるのは、私だけでしょうか。

ところで、中国の経済発展に加速度がついたのは、マイクロソフトのWindows95が発表された 1995年以降です。つまり、世界がインターネットで結ばれてからです。ここで残念なことは、中国は経済発展に伴い拝金主義に走り、環境保全対策に対して蔑ろにしていることです。「三同時」もあったものではありません。2010年には日本を抜いて世界第2位の経済大国になりましたが、一方で最悪な公害国家になってしまっています。

日本もかつて“アジアの奇跡”と言われるほどに、戦後、目覚ましい経済発展を遂げましたが、一方で、前述したとおり激甚公害を抱えることになりました。当時の日本の経済発展の背景には、安い人件費で作られた繊維製品を米国に大量に輸出することで成っていました。このことが米国との貿易摩擦の火種となり、ニクソン大統領(1969〜1974年)は、これに対抗する手段として日本を名指しこそしなかったが、環境教書で「公害を垂れ流す国が市場経済の中に参入してきた」とのメッセージを発信し、日本に圧力をかけてきました。日本政府は、やむなく公害国会を開催し、公害重要14法案を成立させ、1971年に環境庁を設立し、米国の圧力に屈服する形で本格的な環境行政に乗り出したという経緯があります。周知のとおりこの10年後、日本はOECD(経済協力開発機構)に公害を克服した国として高く評価されました。環境行政の取り組みが外圧によるものであること屈辱感はあるものの、これがきっかけに環境保全行政が促進されたことは、結果的によかったと喜ぶべきことだと思っています。

中国の深刻な大気汚染問題は、経済成長と相まって深刻さを増してきたことは多くの関係者の知るところです。中国政府は当初国民には霧であると説明していたようですが、2012年12月の米国大使館が独自に観測していたPM2.5のデータをインターネットで公開された途端、北京市政府はこれを受けて、直ちに市内35か所にPM2.5の観測機器を設置したという経緯があります。日本の環境科学者は、米国の北京大使館がPM2.5をインターネットで発表する遥か以前、1990年代初頭には中国からの越境汚染を確認しています 。でありながら、日本政府は中国政府に対してなんらアクションを取っていな状況でした。仮に、中国政府にもの申しても、何ら相手にされなかったのではないか、うがった見方をすればそれなりにもの申したが相手にされなかった、それが真実だったのかも知れません。極めて遺憾であり寂しいことですが、日本のプレゼンスとはこんなものなのです。

「梟小路 魁」が環境ビジネス書を上梓

書籍表表紙①140425

梟小路魁(オーエスラボ顧問)が、環境コミュニケーションズ社より「環境モニタリング・サービス・プロバイダー・ビジネスへの挑戦」を上梓しました。梟小路魁氏は、環境モニタリングビジネスは、これまでB to BビジネスでしたがB to Cの視点に立てば、そのサービスの景色が変わることを指摘。すなわち環境モニタリングサービスは、プロバイダーとしての性格を持つことの必要性を説いている。地方自治体の環境部局に溜まった膨大な環境情報(データ)を、分かりやすくインフォグラフィックスhttps://www.youtube.com/watch?v=QYSpTMPn3YQをふんだんに使うことで、多くの人びとに理解が得られる情報へと変化する。これからの環境モニタリングサービスは、ICT:http://kotobank.jp/word/ICTとSNS:http://e-words.jp/w/SNS.htmlの下で大きく変革する時代が到来したと述べている。

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