『「クモの糸」産業用に量産』の記事を読んで

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クモの絹糸に最も近い人工繊維は、アラミド繊維のケプラーであり、それは弾丸を停止させるほど強靭である。しかし、ケプラーをつくるには。石油から誘導した分子を濃硫酸の入った加圧バットに注入し、華氏数百度で沸騰させて液晶形に変換して、さらに高圧をかけ、繊維を引き伸ばしながら、成形する必要がある。クモは、それに劣らず強靭で、より弾力性のある糸を体温で紡ぎ出せる。高圧も、熱も、腐食性のある酸も使わない。クモの技を解明することができれば、人間も再生可能な水溶性の原材料にわずかなエネルギーを加えるだけで強靭な不溶性の繊維を作り出せるし、有害な廃棄物を出すこともない」(ジャニス・ベニュス1997年)

クモが糸を出して巣を張ることや、アメンボが水面を走る姿に対して、私たちは当然の行為だと何ら疑問を持たず見つめています。ここで紹介されているようにクモの糸は極めて強靭であり、その糸をクモは環境に負荷を与えず紡ぎ出しています。しかし、人がそれに匹敵するアラミド繊維を造り出すには前述したとおり、化学物質を使い高熱、高圧を掛け造り出す、すなわち多大な環境負荷を掛けているのが現状です。ところが、5月25日に目にした新聞記事(日経朝刊)で紹介された『「クモの糸」産業用に量産、慶大発VBなど微生物を利用』は、まさに人間が生物の行いに沿ってクモの糸に匹敵するものを造ることを可能にしたニュースでした。まだ多くの方々は、あまり耳にしていないと思いますが、先のジャニス・ベニュス氏は、動植物が持つこうした機能を模倣することで、環境負荷を与えない物造が可能であることを説明しています。これをバイオミミクリー(Bio mimicry)、生物模倣と言っています。

ジャニス・ベニュス氏は、2009年7月のTED (Technology Environmental Design)Talksで「行動するバイオミミクリー」と題しスピーチを行っています。http://www.ted.com/speakers/janine_benyus.html(参照)。

TED Talksでは、ブリッド・トレイン(新幹線)の先端部分は、カワセミのクチバシをヒントに造られたたもので、トンネルを高速で走り抜けるときに生じる空気振動を和らげる効果を見出していることなど、様々なバイオミミクリーについて、極めて興味深く語っています。なお、この生物模倣すなわちバイオミミクリーを“ネイチャー・テクノロジー”と説明される方もおられます。いずれにしても、“クモの糸”が現実のものとなったニュースは、大いに賞賛を受けるべき快挙だと、私は考えます。“ファクター10”をめざすOS-labの一員として、このニュースを目にし、改めてバイオミミクリーがいろいろな分野で応用され始めていることに気づかされたことは、地球の持続的発展の可能性の観点から極めて大きな収穫のように思えてなりません。

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